先日の日経新聞「マネーのまなび」面に、今後の送金や資金管理の常識を覆す注目の記事が掲載されていました。
見出しは『個人間・国際送金を安く ステーブルコインを活用』。
「ステーブルコイン(安定したデジタル通貨)」という言葉を聞くと、「ビットコインのような値動きの激しい仮想通貨でしょ?」と思われがちです。しかし、2023年の改正資金決済法によって、一般の暗号資産とは明確に法的に区別され、円建てなら「常に1コイン=1円」として機能する決済手段として整備が進んでいます。
2025年10月に登場した日本初の円建てコイン「JPYC」に続き、信託型の「JPYSC」が登場し、さらに3メガバンクも2026年度中の共同発行に向けて実証実験を進めています。
新聞紙面で報じられた特徴を整理しながら、個人投資家や事業主の視点で「何が実務的なメリットなのか」「どんなリスクに気をつけるべきか」をまとめました。
1. 銀行送金との決定的な違い:24時間365日「ほぼ無料・即時」
記事のなかでJPYCの岡部代表が語っている最大の強みは、「超低コスト・24時間365日即時送金」です。
- 個人間送金・国際送金の手数料:発行や償還(日本円に戻すこと)に手数料がかからず、ほぼゼロコストで送金可能。従来の銀行経由の海外送金(数千円の手数料+着金まで数日)と比べると桁違いの効率性。
- 店舗側のメリット:クレジットカードの手数料(約3%前後)と異なり、レジ前にQRコードを置くだけで決済手数料なしで受け入れ可能。
- カード決済連携:ナッジ社のクレカなどを通じて、VISA加盟店での決済にも使えるなど、日常生活への浸透も始まっています。
不動産業や事業経営をしていると、業者への支払い、外注費、敷金返還、あるいは突発的な資金移動など、銀行の振込手数料や営業時間(他行宛の制約)に煩わされる場面が多々あります。これがオンチェーン(ブロックチェーン上)で手数料ゼロ・即座に完結するとなれば、資金移動のインフラとして無視できない存在になります。
2. 注目を集める「年率3%」のJPYSCレンディング
記事内で投資家目線として特に目を引いたのが、SBI新生信託銀行が発行し、SBI VCトレードが取り扱う信託型コイン「JPYSC」のレンディングサービス(貸出運用)です。
- 内容:保有するJPYSCを預け入れることで、年率3%(期間は約1、3、6カ月)の利回りを得られる。
- 銀行預金との比較:メガバンク等の6カ月定期預金(足元で約0.5%前後)と比較して、3%という利回りは非常に魅力的。
- 税務上のポイント:
- レンディングの収益は「雑所得(総合課税)」扱い。
- 会社員で他に雑所得がない場合、年間20万円までは所得税の確定申告が不要。
- 記事の試算によると、約666万JPYSC(約666万円分)までの預け入れであれば、得られる利息は年20万円以下に収まり、所得税の確定申告不要枠を活用できます。
メガバンクの普通預金や短期定期に眠らせている余剰資金の一部を、手堅く回す選択肢として注目される理由がよく分かります。
3. 実務で使う前に知っておくべき注意点とリスク
ただし、新しい金融技術である以上、従来の銀行預金とは異なるリスクが存在します。
- ペイオフ(預金保険制度)の対象外 銀行預金であれば1行あたり元本1,000万円+利息まで保護されますが、ステーブルコインやレンディングは預金保険の対象外です。レンディング期間中は途中解約して即時現金化することができません。
- 規制と用途の制限
- JPYCは「資金移動業型」のため、1回あたりの送金・償還上限が100万円に制限されています。
- JPYSCは信託型で上限はありませんが、現時点では決済への利用に法規制上の制限があり、送金に使えるようになるのは法改正後の2027年春頃と見込まれています。
- 管理の自己責任(ウォレット管理) スマホのウォレットアプリ等で管理する場合、秘密鍵の紛失や操作ミスによる誤送金は自己責任となるため、従来の銀行窓口のような手厚い救済はありません。
まとめ:メガバンク参入前に「仕組み」を押さえておく
記事の最後にもあるように、欧米ではトランプ政権による中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発禁止令など国家主導の動きに波乱がある一方、民間主導のステーブルコインは急速に実用化へ向かっています。日本でも2026年度中には3メガバンクによる共同発行が控えています。
「よく分からない仮想通貨」と敬遠するのではなく、
- 送金コストや決済手数料を極小化するツール
- 短期余剰資金を効率的に運用する選択肢(年利3%)
として、法整備された「円建てステーブルコイン」の動向を今のうちからウォッチしておく価値は十分にありそうです。
皆さんは、ステーブルコインの送金やレンディングサービス、使ってみたいと思われますか?


コメント